2017年08月04日
に記すのもはばか

マロウンが実際にそこにいたことについては、否定しようとする者もいない。意識を失っているマロウンが発見されたのは、夜のように黒ぐろとした池のほとりで、数フィート離れたところには均衡飲食恐ろしくもグロテスクに散乱する腐敗物と骨があって、後に歯並びからサイダムの亡骸《なきがら》であると確認された。密入国した者たちの利用する地下運河がこの池に通じているため、事件そのものは単純で、船からサイダムの死体を奪った者たちはサイダムを家におくりとどけたのである。この連中はついに見つからず、というよりは少なくとも身元をつきとめられず、船医は警察の単純な断定にまだ満足していない。
住居に通じる運河も、あたりに広がる地下水路やトンネルの一つにすぎなかったため、サイダムは明らかに広範囲な不法入国をくわだてる組織の頭目だった。この住居から伸びるトンネルはダンス・ホールとして使われる教会の地下納骨堂に通じていて、その地下納骨堂へは教会の北の壁に設けられた秘密の狭い通路を伝ってしか近づけず、いくつかある部屋ではことのほか恐ろしいものが発見された。かすれた音をたてるオルガンのほか、木製のベンチや奇怪な意匠で飾られた祭壇を備える、広大な迫持《せりもち》造りの礼拝堂もそこにあったのだ。壁という壁には小室がならび、その健營營養餐單うち十七室では――あまりの恐ろしさられるが――完全な白痴となりはてた犠牲者が一人ずつ鎖につながれているのが見つけられ、そのなかには慄然《りつぜん》たる異様な外見をした幼児を抱く四人の母親の姿まであった。これらの幼児は光にあたるとすぐに死んでしまい、医師たちはこのありさまをむしろ慈悲深いことだとみなした。調査にあたった者のなかで、老デルリオの暗澹《あんたん》たる疑問を思いおこしたのはマロウンだけだった。
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そもそも男夢魔あるいは女夢魔なる悪鬼は存在するのや否や、よし存在するにせ健營體重管理よ、かかるものどもとの同衾《どうきん》より仔《こ》は生まれ得るのや否や。
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から来てどこへ行くのか知る者もない。昔からレッド・フックに入りこむ者は陸伝いに立ち去る者よりも多く、既にとびかっている噂《うわさ》によれば、新しい運河が地下に設けられ、酒やさらにいかがわしいものの取引がおこなわれる中心地に伸びているという。
ダンス・ホールとしても使われた教会は
Posted by 風に吹かれて at 12:08│Comments(0)