2017年03月17日

ばやく抱擁した


ダーニクはうれしそうに飲んだ。
 ベルガラスがダーニクの肩をぎゅっとつかんだ。「わしらが最後に新しい兄弟を持ってから、きょうまで、ずいぶん長かったよ」それだけ言って去眼紋ダーニクをす。
 セ・ネドラが声をつまらせた。「ああ、なんてすばらしいの」
 ヴェルヴェットがだまって薄くて小さなハンカチをセ・ネドラに渡した。「その護符に描かれているのはなんですの?」金髪の娘はかすかに畏怖のにじむ声でたずねた。
「ハンマーさ」ベルガラスが答えた。「きまっとるだろう?」
「ひとつ提案をしてよろしければ、長老」サディがおずおずと口をひらいた。
「下の平原の両軍は完全な混乱状態にあるようです。出発するには願ってもないときじゃありませんか?――連中がわれに返らないうちに」
「まったく同意見だよ」シルクが宦官の肩に手をおいた。
「そのとおりだ、ベルガラス」ベルディンもうなずいた。「おれたちがここでやるべきことはやった――というか、すくなくともダーニクがやってくれたんだ」魔術師はためいきをついて断崖のふちへ目をやった。「ほんとはウルヴォンはこの手で殺してやりたかったんだが、このほうがよかったのかもしれん。やつが地獄の生活を楽しむことを願うぜ」
 いきなり、尾根のてっぺんから甲高い勝利reenex膠原自生の笑いが聞こえた。すばやくふりかえったガリオンはおどろいて凍りついた。尾根の上に黒装束のダーシヴァの女魔術師が立っていた。そのかたわらには金髪の小さな少年が立っている。ゲランの容貌は誘拐されてからの一、二年で変化していたが、ガリオンはすぐに息子だとわかった。「あたしの仕事をうまくやっておくれだったね」ザンドラマスは声をはりあげた。「トラクの最後の弟子にこれ以上ぴったりの最期を見つけることはあたしにだってできなかっただろうよ。〈光の子〉よ、これであたしとクトラグ・サルディウスとのあいだに立ちはだかる障害はおまえだけになった。〈もはや存在しない場所〉でおまえのくるのを待っているよ。おまえはあたしがアンガラクに新しい神をうちたてる目撃者となろう。その新しい神こそがこの世の終わりまで全世界に君臨するのだ!」
 ゲランがすがるようにセ・ネドラのほうへ手をのばした。が、次の瞬間、かれもザンドラマスも消えてしまった。
「おどろいたこと」雌狼が驚嘆のつぶやきをもらした。  


Posted by 風に吹かれて at 18:57Comments(0)